怪我と違って、腰痛の場合には、見た目には何の異常も見られません。それどころかレントゲン等で検査してみても、異常が見られないケースも多いのです。
それなのに、どうして腰の痛みは起きているのでしょうか?
実は、痛みが生じている仕組みを理解すると、腰痛を治す方法も分かってくるのです。
身をもって知った電撃痛!
酷い腰痛になると、今まで経験したことのない強い痛みに誰もが戸惑うと思います。
私の場合は椎間板ヘルニアと診断されましたが、しばらくの間は、いわゆる「電撃痛」の恐怖に怯えて暮らさなければなりませんでした。
今までにも腰に重い痛みを感じたことはありましたが、本当の腰痛の痛みとは、こうも酷いものなのかと身をもって知りました。
軽く咳をしただけでも、その衝撃で、とんでもない痛みが腰に走ります。
咳やくしゃみが出そうになると、唾を飲み込んでどうにしかして止めようと努めるのですが、緊張して顔に脂汗が滲み出てくるくらいです。
まさに電撃痛は恐怖そのものなんです。
この腰の痛みに耐えかねて、死を選んだ人も過去にいるのではないか?と真剣に思ったものです。もしも腰痛とともに風邪をひいてしまったらと想像すると、今でも本当にゾッとします。
電撃痛の痛みとは?
腰痛の経験のない人に「電撃痛の痛み」を説明するのは難しいのですが、本当にバチバチッ!と高圧電流に触れた感じに似ているのかもしれません。
その瞬間は「痛い!」なんて言葉すら出ません。ただただ、口から言葉にならない呻き声が漏れるだけです。
少しでも動くと痛むので、叫び声を出すこともできないのですね。何度も続いたら失神してもおかしくないほどの痛みです。
それにしても、このような酷い電撃痛の痛みは、どこから来るのでしょうか?
当時の私は、腰椎の椎間板が損傷したために、こんなに酷い痛みが生じているのだと思っていました。実際に治療師からも、そのように説明されたと思います。
しかし、後で調べて分かったことですが、実は、椎間板ヘルニアと言っても、椎間板そのものが痛みを感じ取っているわけではないのです。
なぜならば、骨、椎間板、軟骨、毛、爪などには、痛みを感じ取る神経が通っていないからです。
爪や髪を切っても痛みはありませんよね? それと同じで、たとえ骨折をしたとしても、骨そのものが痛みを感じ取っているわけではないのです。
なぜ痛みは起きるのか?
では、どこで痛みを感じ取っているのでしょうか?
実は、痛みを感じ取っている場所は、筋肉の中にあります。靱帯、腱、脳や内臓の膜などにもあります。これらの中に痛みを感じ取る神経が通っているのです。
ということは、妙な表現に聞こえると思いますが、要するに腰痛とは「筋肉痛」なのです。
骨や椎間板などに異常があっても、それらが痛みを感じているのではなくて、その周囲にある筋肉が痛みを感じているということです。
もう少し詳しく説明すると、人間は神経の神経終末(先端・末端)で痛みを感じ取っています。
この痛みの原因となっている物質には、乳酸、ブラジキニン、蛋白分解酸素、セロトニン、ヒスタミン、カリウムイオン、アセチルコリンなどがあります。
これらは、筋肉の中に溜まっている疲労物質なのです。この疲労物質は、神経を刺激する働きをします。
私たちは、それを痛みとして感じ取っているのです。
痛みの原因は、筋肉の緊張にある!
痛みには、外傷や炎症、内臓疾患、ウイルスによる感染などで起きている痛みもありますが、それ以外の痛みやしびれは筋肉の緊張で起きています。
坂戸孝志氏の著書「カラー版 9割の腰痛は自分で治せる (中経の文庫)」では、「痛み=筋肉の緊張」と、明確に定義されています。この筋肉の緊張とは、筋肉が硬くなっている状態を意味します。
筋肉の緊張は、画像検査をしても明確に確認できないので、腰痛の原因の多くが特定できずにいるのは分かる気がしますね。
筋肉の緊張によって何が起きるのか、以下に整理してみます。
① 筋肉が緊張すると、血管が圧迫されて血行が悪くなる。
② 細胞に酸素や栄養が供給されにくくなり、これが悪循環を起こして、さらに筋肉を硬くする。
③ 筋肉内に疲労物質が溜まりやすくなる。
④ この異常に溜まった疲労物質が神経を刺激する作用をするので、ささいな動作をするだけでも痛みが生じる。
椎間板に損傷が見られても、痛みを感じていない人も多い
ここで疑問に思う人もいるかもしれません。
例えば、椎間板ヘルニアは、「椎間板が損傷して、中の髄核が飛び出して神経を圧迫しているために痛みが生じているのではないのか?」という疑問です。
この場合には、筋肉内に溜まった疲労物質は関係がないように思えます。私も最初はそのように考えました。
でも、画像検査をしてみると、椎間板に損傷が見られるのに痛みを感じていない人も多いのです。これは何を意味しているのかと言えば、やはり疲労物質が関わっているという事実ではないでしょうか?
目に見える原因は椎間板の損傷であっても、神経を刺激する疲労物質が筋肉内に溜まっていなければ、痛みを感じないということになるのです。
このように痛みの仕組みを理解すると、腰痛の改善方法が見えてきます。
それは筋肉をやわらかい状態に戻して血行を良くし、筋肉に溜まった疲労物質を血液に流し去ってもらうことです。これが腰の痛みを根本から治す方法になります。
やらわかい筋肉とは、たとえばお尻や二の腕の筋肉です。触ってみると、やわらかいですよね? 力を入れると硬くなるので、脂肪の塊ではなく筋肉なのです。このような状態が、やわらかい筋肉の理想になります。
内臓疾患や感染、がんなどの病気、外傷を原因とした腰痛を除いて、ほとんどの腰痛が筋肉をやわらかい状態に戻すことで治ることになります。
筋肉をやわらかくするための注意点
「筋肉をやわらかい状態に戻す」と簡単に書いてしまいましたが、普通に解釈すると誤解してしまうので、最後に注意点を書いておきます。
次のことはやらないでください。
それは筋肉をもんだり、叩いたり、押したり、伸ばしたりすることです。
これらの行為は筋肉をやわらかくして、一時的に気持ちがいいようにも感じますが、実は、逆の結果を生み出します。
【筋肉をやわらかくするために、やってはいけないこと】
筋肉をもむと悪化します(マッサージ後のもみ返し) 10回以上筋肉を叩くと、さらに筋肉は緊張します 強く押すと(指圧)、さらに筋肉は緊張します 無理に伸ばすと、最悪の場合、筋肉の線維が切れます
日本整形外科学会と日本腰痛学会の「腰痛診療ガイドライン 2012」においても、徒手治療(手を用いて関節や周囲の組織に効果を及ぼす手法)には、さまざまな有害事象の報告がある、と書かれています。
一時的な痛みの軽減は感じても、根本的な腰痛治療としては推奨されていません。
腰痛の改善法としては、正しい姿勢を身に付けることが一番なのですが、筋肉をやわらかくするためには様々な改善法や改善グッズがあります。
当サイトでも随時紹介してきますので、参考にしてみてください。