腰痛の改善方法と言うと、たいていは猫背などの悪い姿勢を正して、同じ姿勢を長時間続けないことなどが挙げられます。
もちろん、これは正しい改善の方法です。実際に私もこの2点に気を付けて、腰痛を改善させました。もしも、この2点を忘れたならば、また腰痛になってしまうと今でも思っています。
但し、当記事では少し違う視点から、腰痛の改善方法を述べたいと思います。
それは何かと言うと、「呼吸方法」です。腰痛と呼吸は、何の関係もないように思うかもしれません。腰痛の改善方法として、呼吸が取り上げられることも少ないと思います。
しかし、腰痛のそもそもの原因は、「筋肉の緊張」にあります。これは多くの医療関係者や、腰痛の専門家も口を揃えて言っていることです。
そう考えると、正しい呼吸方法を取り入れることで、腰痛の改善も大いに期待できるのです。
今までの方法では、なかなか腰痛が改善できなかった人は、ぜひお読みください! 思いもしていなかった目からウロコの方法で、本当に長年の腰痛が改善するかもしれません。
腹式呼吸で、自律神経を整える
あとで私がお勧めする鼻呼吸とは少し異なりますが、説明するよりも先に呼吸の効果を実感したほうが早いと思うので、最初に「腹式呼吸」をご紹介します。
腹式呼吸で、筋肉の緊張をほぐす
腰痛改善の呼吸法として、よく勧められているのが腹式呼吸(横隔膜呼吸)です。
腹式呼吸の方法は、知っている方も多いと思いますが、簡単に言うと次の通りです。座っていてもできるので、さっそくやってみてください。
【腹式呼吸の方法】
1 鼻からゆっくりと息を吸って、お腹を膨らませるようにします。この時、胸を使って息を吸わないようにします。
2 息を吸ったならば、今度はお腹をへこませるようにして、口から息をゆっくりと吐き出します。
回数や秒数にはこだわらずに、リラックスすることを念頭に置いてください。せわしくスーハー、スーハーするのではなく、「ゆっくり行うこと」が基本です。
体がポカポカと暖かく感じてきたならば、腹式呼吸の効果が出ている証拠です。
すぐに腰の痛みが和らぐかどうかは腰痛の程度によりますが、体の緊張がゆるゆると解けた感覚は、実感できたのではないでしょうか?
なぜ腹式呼吸が、腰痛の改善になるのか?
自律神経という言葉は、よく聞くと思います。自律神経は、内臓の動きや血液の流れ、栄養の吸収や老廃物の排出など、人間が意識しなくても働く大切な機能を司っています。
これには人間が活動しているときに働く「交感神経」と、睡眠時や休息している時に働く「副交感神経」の2つがあります。
ところが、日常的にストレスを受けると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまい、交感神経だけが働く自律神経失調症が発症します。
交感神経が働きすぎると、血管や筋肉が収縮したままの状態になってしまいます。つまり、筋肉が緩むことなく、ずーっと緊張しているような状態が続いてしまうのです。
また、痛みをコントロールする物質として、ドーパミンと呼ばれている脳内物質があります。このドーパミンは、痛みを軽減させる役割をします。
しかし、ストレスを受けると脳内物質のバランスが崩れてしまい、このドーパミンの分泌が減ってしまいます。これによって、過度に痛みを感じてしまうようになるのです。
要するに、ストレスによって、人間が本来持っている優れた機能が働くなってしまうことが、腰痛の原因にもなっているわけです。
「なぜ腹式呼吸が、腰痛の改善になるのか?」と言えば、乱れていた自律神経を整え、体が本来持っている機能を回復させ、なおかつ筋肉の緊張をほぐす効果があるためです。
腰痛とは関係がないように思える呼吸方法が、実は、腰痛の改善に繋がるという仕組みが理解できたのではないでしょうか?
イビキと腰痛には、相関性がある
腰痛持ちの人には、イビキを掻く人が多いと言われています。
かくいう私自身もそうでした。これを読んでいるあなたも腰痛で悩んでいるならば、やはりイビキにも悩まされているのではないでしょうか?
こちらも一見、腰痛とは何の繋がりもないように思えますが、実はちゃんと繋がっています。
イビキの原因は、口呼吸にある
「ガー、ガー」とやかましいイビキを掻いて寝ると、一緒に寝ている家族から文句を言われます。当の本人も、朝起きると喉が痛くて、ぐっすり眠ったような気がしません。
とはいえ、寝ている時には、自分でイビキをコントロールできないのが、大きな悩みです。
イビキの原因としては、喉の炎症や加齢などによって喉の筋力が弱ったため、イビキを掻くと思っている人も多いかもしれません。
実は、イビキの原因はもっと単純です。「口呼吸」をしていることが、大きな原因なのです。
口呼吸をすると、下顎が下がり、舌根や軟口蓋(口の奥の上顎部分)が落ち込みやすくなるため、気道を狭くしてしまいます。この状態で寝ると、イビキが出やすくなるのです。
では、なぜ腰痛の人には、イビキを掻く人が多いのでしょうか?
その理由として、腰痛の人は骨格に歪みがあるため、顎が前に出る前傾姿勢を取ってしまうためだと指摘する人もいます。
確かに、その姿勢で仰向けになって寝ると、口がパカッと開いて口呼吸になりやすいので、イビキが出やすくなります。
しかし、口呼吸になってしまうのは、骨格の歪みのせいだけとも言えないのではないでしょうか?
口呼吸になってしまう理由には、そもそもの原因があります。さらに元を辿れば、この口呼吸こそが、腰痛を引き起こしている原因になっているかもしれないのです。
口呼吸には弊害しかない
人間だけでなく、動物も含めて自然な呼吸方法は、「鼻呼吸(びこきゅう)」になります。犬はハァハァと口呼吸しているように見えますが、実際には鼻から息を吸い込んでおり、舌を出して体温を下げているだけなのです。
口はそもそも、呼吸のためにあるのではありません。消化器官としてあるわけです。呼吸器官は、あくまでも鼻なのです。
このため、本来の呼吸方法ではない口呼吸が習慣になると、イビキを掻きやすくなるだけでは済まずに、多くの弊害が出ます。
口が乾燥して細菌が増殖しやすくなり、その結果、虫歯や歯周病になったり、免疫力が低下して風邪を引きやすくなったりします。
他にも口臭、アレルギー、胃炎や大腸炎、倦怠感、睡眠時無呼吸症候群などの原因も作ります。口呼吸には、弊害しかないと言っても過言ではありません。
鼻呼吸をすれば、鼻が持つフィルター機能が働いて、異物やウイルスの侵入を防いでくれます。でも、口呼吸の場合には、このフィルターがないのです。
塵やバイ菌でいっぱいの空気を、そのまま体内に吸い込んでいると考えてみてください。これは、かなり怖いことです。口呼吸をしている人は、そうとも知らずに口呼吸をしているわけです。
そして当記事では、ここがポイントになりますが、口呼吸をすると呼吸量が大きくなってしまうのです。鼻の穴よりも口のほうが大きいので、どうしてもそうなります。
「呼吸量が増えて何が悪いの?」と思うかもしれませんが、これは日常的に「過呼吸の状態」になるという意味なのです。
気道が狭くなる原因は、二酸化炭素の損失によるもの
口呼吸で空気を大きく吸うことにより、喉が冷え、乾燥するために気道が狭くなるという医学的な見解があります。
気道が狭くなると、もっと息を吸い込もうとして過呼吸になります。これは普通に考えても、そうなりますね。
しかし、それだけではありません。さらに興味深い医学論文が発表されています。
それは喉の気道が狭くなるのは、二酸化炭素の損失が原因だと言うのです。
酸素は体に良いもので、二酸化炭素は良くないものというイメージを持っていませんか?
でも、実は二酸化炭素も、体に重要な働きをしています。その理由は次の通りです。
酸素は溶けにくい性質を持つため、体内に取り込んだ酸素の約98%は、ヘモグロビン分子にくっついて運ばれています。
しかし、体内の二酸化炭素が必要レベルの5%まで蓄積されていないと、酸素はヘモグロビンに結合したたまま、体内に放出されないのです。
つまり、呼吸によって多くの酸素を取り入れても、二酸化炭素が不足していると、酸素を体内に取り込めないということです。
では、二酸化炭素の不足は、どのようにして起きるのでしょうか?
実は、大きく呼吸をすることで、息を吐くときに必要な分の二酸化炭素まで過度に吐き出してしまっているのです。
これによって、酸素を多く吸い込もうとして大きな呼吸をすると、必要な二酸化炭素を損失してしまい、逆に酸素が体内に取り込めなくなるという、皮肉な現象が起きることになります。
過呼吸の人は、酸素の必要を感じて大きな呼吸をしますが、それでさらに過呼吸になるという悪循環を生み出しているのです。
口呼吸から鼻呼吸に変えて、腰痛を改善する!
口呼吸による弊害と、過呼吸になる仕組みについて理解できたと思います。では、それが腰痛の原因と、どのようにして結び付いているのでしょうか?
口呼吸が腰痛の原因になっている?
過呼吸の自覚がない人も多いと思います。しかし、口呼吸が習慣になっている人は自然に大きな呼吸をしているので、過呼吸の状態になっている可能性が高いのです。
寝ている時にイビキを掻くのは、口呼吸のせいだと前述しました。その本当の原因は、日常的に過呼吸になっているからです。
空気を多く吸い込もうとして、寝ている間、無意識に口呼吸になってしまうのです。
腰痛持ちの人にイビキを掻く人が多い原因は、骨格の歪みだけではないとも書きましたが、それは過呼吸になっていることを疑ってみる必要があるからです。
過呼吸の人は、通常よりも多くの空気を吸い込んでいるにも拘わらず、体内が酸素不足の状態になっています。
この酸素不足によって、体内に必要な酸素や栄養素が届いていないのです。これが筋肉の凝り(緊張)となり、疲労物質を溜め込んでしまい、腰痛の原因になっている可能性があります。
腰痛と聞くと、腰にばかり目がいってしまいますが、元の原因を辿れば、本人が思いもしていなかった口呼吸のせいかもしれません。
体の機能は複雑に出来ています。原因が巡り巡って、それとは関係がないと思われる体の弊害を生み出すことがあるのです。
しかし、原因さえ突き止められれば、正しい対策が行えます。
腰痛とともにイビキや鼻づまり、睡眠時の無呼吸の症状に悩んでいる人は、日常的に口呼吸をしている可能性があるので、鼻呼吸へと切り換えてみてください。
口呼吸は、習慣によって身に付いてしまったものです。この悪習慣を絶つ気持ちさえあれば、自然な鼻呼吸に戻すことができます。
これには薬も道具も不要です。たった今から、口呼吸をしていないかどうか、常に意識してみてください。
鼻づまりに即効で効く方法
慢性的な鼻づまりのために、口呼吸になっている人もいると思います。これには即効で効く方法があります。しかも、簡単です。
鼻で少し息を吸い込んで、次に息を吐き出した時に、鼻を指でつまんで息を止めてみてください。苦しくなった段階で、息を吸って結構です。
これだけで、あら不思議、鼻づまりが解消されていませんか?
二酸化炭素には、気道や血管を取り巻いている平滑筋を、弛緩させる効果もあります。少し息を止めるだけでも、二酸化炭素が増えて、鼻の通りを良くしてくれるのです。
しばらくすると、また元に戻ってしまいますが、常時、鼻呼吸に切り換えると、この鼻づまりも解消されていきます。
空気のダイエットも必要
口呼吸をしていた人が鼻呼吸に変えると、しばらくの間は息苦しさを感じると思います。
これは過食症の人が、もっと食べたいと思うのと同じで、今まで口呼吸によって必要以上の空気量を吸い込んでいた反動のためです。いわば、空気のダイエットも必要なのだと思ってください。
私の場合には、鼻で空気をゆっくりと少し吸って、ゆっくりと吐き出し、呼吸の回数と量を減らすようにしました。
鼻から空気を一気に吸い込んで、フーッと口からゆっくりと吐き出す呼吸方法などもよく紹介されていますが、それはそれと考えて、私は息を吐き出すときにも口は使わないようにしています。
馴れないうちは徹底したほうが良いので、鼻で吸った息は、ゆっくりと鼻から吐き出します。
ちなみに、呼吸方法と腰痛に相関関係はないという人もいるかもしれませんが、少なくとも私にはイビキが減った効果が出ました。
そして、理論的に見ても、鼻呼吸は腰痛患者にも十分に効果が期待できると考えています。
興味のある方は、下記の本を参考にしてみてください。記事には書き切れなかった具体的な呼吸方法が記されています。
「たったこれだけのことで、今まで悩んでいた腰痛が治った!」という人も出るのではないかと期待していますが、個人差はあると思うので、その点はご自身の判断でお願いします。
⇒ 口を閉じて、呼吸を 整える。: ビュテイコ呼吸法クリニック 自己管理マニュアル 喘息、花粉症、鼻づまりと永遠にさ ようなら!
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