酷い腰痛を経験すると、しばらくの間は、腰を曲げることが怖くなります。床に落ちた物を拾うにも、おっかなびっくりです。咳やくしゃみの度に、恐怖が伴います。
これは腰痛持ちの人ならば、誰もが経験しているのではないでしょうか?
実は、最新の研究報告によると、慢性腰痛の原因として、「脳の働き」が関係している可能性が指摘されています。
痛みへの極度な恐れが、脳の働きに不具合を生じさせて腰痛を長引かせている、と言うのです。これは今までの常識を覆す目からウロコの新説です!
慢性的な腰痛に悩んでいる人は、ぜひお読みください!
腰痛の原因は持ち越し苦労?
苦労には、「取り越し苦労」「持ち越し苦労」「持ち出し苦労」の3つがあると言われています。
その中の「持ち越し苦労」は、過去に起きた失敗を引きずって、「また痛い目に遭うのではないか?」と、いつまでも不安に怯えている苦労のことを言います。
実は、この持ち越し苦労が腰痛の原因になっているという最新の研究報告があるのです。
脳のDLPFCが衰えて、腰痛を長引かせている
研究報告によると、腰痛に長年苦しんでいる患者の脳を調べてみたところ、健康な人に脳と比べて、脳内の「DLPFC」という部分の体積が極端に減っており、活動が衰えていることが判明したのです。
DLPFCが衰えると、「痛みの回路」を鎮める指令が満足に出せなくなります。そうなると、腰痛の症状そのものは治っているのに、痛みが消えないという理不尽な現象が起こります。
「腰が痛い⇒ 過剰な恐怖心⇒ 脳のDLPFCが衰える⇒ 治っているのに痛みが引かない」という、奇妙な負のスパイラルが出来上がってしまうのです。
そもそもDLPFCが衰えてしまった原因は、痛みによるストレスにあります。要するに、腰痛への過剰な恐怖心が、脳の正常な働きを阻害してしまい、腰痛を長引かせているのです。
長年苦しめられている慢性的な腰痛は、実は、自分の脳が作り上げている「幻の腰痛」である可能性もあるわけです。
この研究報告は、2015年に放送されたNHKの「腰痛・治療革命」でも取り上げられて、大きな反響を呼びました。こちらは、『脳で治す腰痛DVDブック』の書籍にもなっています。
腰をかばいすぎて、過剰に痛いと感じ続けている
腰痛の原因の85%は原因の特定ができない腰痛であり、未だに治療法が確立していません。MRI検査などの医療技術は進歩しているというのに、多くの腰痛の原因が分からないのです。
しかし何の原因もないのに、痛みが発生するということはありません。今まで見逃していた要素が必ずあるわけです。それが意外にも、脳の働きであったわけです。
これはMRI検査で腰部を詳細にスキャンしてみても、分かるものではありません。そう考えると、なかなか腰痛の原因が解明できなかったわけが理解できますね。
いつまでも治らない慢性的な腰痛は、いわば、患部は治っているのに、「痛みへの恐れ、動かすことへの恐怖」が強すぎて脳のシステムに不具合が生じてしまい、「腰をかばいすぎて過剰に痛いと感じ続けている」といった状態です。
腰をかばいすぎて過剰に痛いと感じ続けている
慢性的な腰痛の原因が、「痛みへの恐怖である」と仮定してみます。この場合には、恐怖さえ取り除けば、腰痛も消えるわけです。
では、恐怖を克服する最良の方法とは何でしょうか?
それは、「自分が恐れていることをしてみること」なのです。その結果、「実は恐れているほどのことではなかった」と知れば、恐怖はスーッと消えていきます。
腰痛を抱えている人にとって、怖いことは「腰を反らせる」ことではないでしょうか?
腰を反らせる運動は、昔はタブーとされていました。しかし有名なマッケンジー法によって、それまでの医学の常識が覆されることになります。
現在では、腰痛を改善させる手法の一つとして、腰を反らせる運動も推奨されているのです。
マッケンジー法の書籍には書かれていませんが、実は「恐怖の克服」によって腰痛が治っている部分もあるのかもしれません。
腰痛に効く! 3秒の超簡単ストレッチ
では、さっそく腰を反らすストレッチを試してみましょう。これは3秒でできる一番簡単な方法です。
※まさに今、急性腰痛で動けない人は無理をしないでください。慢性的に腰の痛みを抱えている人にお勧めします。
① 両足を肩幅よりも、やや広めに開いて立ちます。
② お尻に両手を当てます。
③ 膝を伸ばした状態で、両手で骨盤を押し込むようにして、息を吐きながら3秒間腰を反らします。
④ このストレッチを10回行います
なんてことのない運動ですよね。でも、腰痛患者にとっては、腰を反らせるというだけでも恐怖を感じている人は多いものです。
でも、実際にやってみると、「何てことなかった!」ということが分かります。この安堵感を脳に刷り込むことが、この方法では重要なのです。
いわば、脳のリハビリになります。抱えていた恐怖が大きかった分だけ、効果が上がることになります。
但し、全ての慢性腰痛が「脳の働き」であるとは限りません。まだ患部そのものの原因が、ちゃんと取り除かれていない場合もあります。
それでも上記のストレッチは、安全にできる腰痛の改善方法なので、慢性的な腰痛を抱えている人は、このストレッチを日常生活に取り入れてみてください。
ストレッチによって、緊張して硬くなっていた筋肉をやわらげ、ズレていた髄核を戻す効果が得られます。
必要以上にネガティブな思考を持たない
専門的には、痛みを過剰に恐れる心理は「恐怖回避思考」と呼ばれています。皮肉なことに、恐怖回避思考は治療のために通っている病院で植え付けられてしまうことが多いのです。
MRI検査やレントゲンによって、骨格に異常が見つかると、腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの病名が告げられることになります。
単なる腰痛だと思っていたのに、自分の骨に異常が写っている画像を見せられ、難解な病名が付けられると、「手術が必要なのか?」などと過剰に恐怖を覚えてしまうわけです。
医師に責任があるわけではないのですが、患者に必要以上にネガティブな思考を持たせないように、接する態度や言葉には気を配らないといけませんね。
ちゃんと丁寧に患者の問診をし、相談に乗ってあげることで、患者の不安や恐怖は解けるものなのです。
抗う気持ちで腰痛と闘わない
私の経験から言うと、あまり腰痛と闘わないほうが良いのです。闘うという意味は、「腰痛を何が何でも退治してやる!」というような抗う気持ちです。
そう思った途端、腰痛が敵になってしまうので、少しの痛みでも過剰に反応してしまいます。その痛みが脳に刷り込まれてしまうのです。
闘病をしている気持ちでいると、腰痛の原因の一つとされているストレスも溜まってしまいます。そうなると副交感神経が正常に働かなくなります。
副交感神経は、活疲れた体を回復させる神経であり、その正反対のはたらきをする交感神経とバランスよく働くことで、私たちは健康な体を保てるのです。
「腰痛を退治してやる!」と思い過ぎると、焦りの気持ちが生じて、間違った筋トレなども始めてしまうので、その点にも注意してください。
腰痛にも意味がある
「世の中に偶然はない」と考えるならば、あなたの腰痛も、何かの拍子に偶然起きたのではありません。
腰痛は体が発しているSOSだと考えてみてください。今の生活習慣を改めないと、もっと大きな病気を発症してしまうので、腰痛の痛みによって、体が事前に危険を知らせてくれているのです。
悪い生活習慣には、猫背などの悪い姿勢があげられます。普段の生活で猫背の姿勢が癖になっていると、体のあちこちに弊害を起こすので、「姿勢を改善せよ!」と体が訴えているのですね。
また、腰痛になることで、健康のありがたみが痛いほど分かります。今までの不摂生な生活に反省が入ります。
腰の自由が利かないと、何をするにも誰かの手伝いが必要になりますね? 今まで当たりと思っていた家族や人の好意にも、感謝ができるようになります
腰痛と闘うよりも、感謝の気持ちを持つことが大切です。実はそれが腰の痛みの恐怖を乗り越え、腰痛を改善させる一番の方法なのです。
こちらも併せてお読みください。私がどのような気持ちで腰痛を治したかを書いています。