前回の記事の「腰の痛みの原因は、筋肉の緊張にある!」で、筋肉が緊張して硬くなることで、腰の痛みが起きていると書きました。
これは非常に大切なポイントになります。腰の痛みの原因さえ分かれば、腰痛の改善が可能になるからです。
では、問題の「筋肉の緊張」ですが、これはなぜ起きるのでしょうか?
① 筋肉を動かすことで緊張する
前回のおさらいをしておくと、「痛み=筋肉の緊張」という図式になります。
簡単に言えば、筋肉が硬くなることで、筋肉内の血管や神経が圧迫されて痛みが生じているわけです。
①の「筋肉を動かすことで緊張する」は、まさに筋肉痛のことなのです。
激しい運動をした後には筋肉痛になりますよね? これは誰もがも経験していることなので、分かりやすいと思います。
なぜ筋肉を動かすことで緊張するのかと言えば、筋力以上の激しい運動を続けると、筋肉内の血流が不足します。オーバーヒートしてしまうわけです。
そうなると、乳酸や老廃物などの疲労物質を筋肉内から排出できなくなります。そして筋肉が緊張し、血管や神経が圧迫されて、痛みが生じることになります。
筋肉痛になったならば、「筋肉内の乳酸や老廃物が、うまく排出できていないんだな」と理解してください。
腰痛であるならば、腰の周辺の筋肉で、そのような現象が起きているのです。
② 筋肉を動かさないために緊張する
こちらは逆に、筋肉を動かさないために緊張してしまうケースです。動かさなくても、筋肉は緊張するのです。
私たちの血液は、心臓の力だけで全身を巡っているわけではありません。実は、筋肉も血液のポンプ役になっています。筋肉が伸縮することで、スムーズな血流を作っているのです。
ところが、筋肉を動かさないでいると、このポンプが効かないので血行不良を起こします。
筋肉を動かさない状態が長く続くと、何が起きるでしょうか? カルシウムが筋肉に溜まって、筋肉を硬化させてしまうのです。
カルシウムは排出されにくい性質を持っているために、血行が悪くなると、筋肉内に長く留まります。また、乳酸や老廃物などの疲労物質も排出されずに溜まっていきます。
これが悪循環を生み出して、周囲の筋肉も緊張状態にさせてしまいます。「痛み=筋肉の緊張」ですから、緊張した筋肉が増えると、その分だけ痛みが増すことになります。
動かさなくても筋肉は緊張すると書きましたが、筋肉を動かさないために緊張する筋肉は、人間の身体の中でも「腰部の筋肉」だけだと言われています。
ちなみに、昔は腰痛になったら安静にしたほうがよいと指導されていました。でも現在の指導では、無理のない範囲で動いたほうが良いと言われています。
それは腰部の筋肉を動かさないでいると、前述した理由で、筋肉が硬くなってしまうからなのです。
③ 骨格の歪みによって緊張する
筋肉は骨格の歪みによっても緊張します。但し、最初に骨格が歪んで、そのために筋肉が緊張するのではありません。順番が逆なのです。
腰部の筋肉が緊張すると、緊張のために縮んだ筋肉が骨を引っ張って、骨格の歪みを作ってしまいます。
すると、その周辺の筋肉が、歪んだ骨格を元に戻そうと頑張るので、筋肉が緊張してしまうのです。筋肉と筋肉がお互いに引っ張り合いをしてしまうわけです。
▲骨盤の歪みが発生する仕組み
具体的に説明すると、前述した①や②の理由によって腰部の筋肉が緊張して縮みます。これによって、骨盤の腸骨が上に引っ張られたり、ねじれたりします。この状態を「骨盤の歪み」と言います。
骨盤に歪みが生じると、仙骨と腸骨の間には仙腸関節があって、その周辺の筋肉や靱帯が、これ以上の骨盤の歪みを防止しようとして耐える力を働かせ続けます。
その結果、仙腸関節周辺の筋肉や靱帯も、やがて緊張してしまうことになります。悪循環の連鎖によって、緊張する筋肉がどんどん広がってしまうのですね。
そして腰痛は重症化していく
腰痛になると重症化していくというのは、前述した①②③の理由で、悪循環が働いてしまうからなのです。
緊張した筋肉が、周辺の筋肉も緊張させて、その範囲をどんどん広げていきます。
この悪循環を断ち切らないと、腰部だけに留まらず、やがて肩こりや五十肩、頭痛も呼び起こしてしまうことになります。
私もそうでしたが、腰痛を長らく患っている人は、身体の他の部位にも不調を感じているのではないでしょうか?
疲れやすくなったり、冷え症になったり、身体のだるさも感じていないでしょうか?
身体全体の筋肉が緊張し、あらゆる箇所で血行不良が起きていくのですから、健康に良いはずがないのです。精神的にも悪影響を及ぼします。
腰痛を軽く見てはいけないのであって、本来の健康を取り戻すために、この悪循環は断たなければいけません。
腰の筋肉が緊張し、硬くなる3つの原因を簡単に説明してきましたが、これらの仕組みを理解して、今後の腰痛の改善に取り組んでみてください。
筋肉が緊張する原因については、おもに下記の書籍を参考にしています。